少女と庭師のロボット



その日は澄み渡る様な空をしていた。茶色の髪の少女がその空の下、走っている。目的地は少女のよく通う浮かぶ島の一つだろう。

「ラドー!」

少女、名をレーナと言う。レーナは小さな橋を登り、大きく手を振って浮かぶ島へ足を踏み込んだ。そこは様々な花が咲き誇る、まさに花園であった。咲く花々を見ると、季節はきっと春なのだろう。

「ラド、何処に居るの?」

レーナは目的のモノが居ないことを知ると、探しに歩きだした。キツネリスが足元を掛けてゆく。何度もレーナがラドと呼ぶ。今度は大きな鳥が空を飛んだ。

「ラドー」

少女は困ったように眉を下げた。目的のモノは必ずこの浮かぶ島に居る筈なのだ。それは間違いない。だって目的のモノはこの島から出るなんて考えやしないのだから。

ドス

突然、レーナの目の前に巨大なロボットが現れた。そのロボットに、レーナは怯えるわけでは無くむしろ嬉しそうに走り寄った。

「ラド!」

どうやらレーナの目的はこのラドと呼ばれたロボットの様だ。少女がラドと呼ぶロボットは、片手に抜いたばかりであろう雑草を持っていた。なので、ラドはきっと庭師のロボットなのであろう。

「ラド、またお話を聴いて頂戴。お仕事はいつ終わるの?」

ラドはレーナに向かって何度か頭のライトを点滅させると、何も言わずに歩き出した。まあ彼というロボットに口は無いので喋ることができるはずがないのだが。
レーナはライトの意味を悟ったのか、楽しそうにラドの後をついて行った。その光景はまるで親鳥と雛鳥のようだ。

やがて少女とロボットが辿り着いたのは小さな丘になった場所だった。浮いている島の一つであるレーナとラドが立つ島はそれ程大きくないが、小さな丘と風車、華やかな花園がある程度の大きさはあった。ラドにとっては小さく、レーナにとっては大きな島をレーナは一人、花園の島と呼んでいた。花園の島はラピュタ人にとっては特別珍しいものでは無く、花園が見たいのならもっと大きな島に行くことが多い。しかし、レーナはこの花園の島が大好きだった。
レーナは小さな丘に座ると、雑草を溜めている草山に手から雑草を落とすラドを呼び、隣に来るようにただした。ラドは頭のライトを二回ほど点滅させて、少女の隣に膝を抱えて座った。すぐに少女は語り出す。昨日パンを一人で焼いたとか、飛行石の欠片を無くしそうになったとか。他愛もない話だ。
そんな最中のことだった。急にレーナの声が抑えめになる。さっきまで大きな声で嬉しそうに最近の出来事を話してたレーナが。

「ねえラド」

レーナは遠くを見つめていた。

「王様のお城の為の飛行石を作るそうなの」

少女の目は何も映さなかった。

「地上から沢山の飛行石が含まれた石を買い付けて、精製するんですって」

鼠に似た生き物が、ぽとりと水へ潜った。

「ねえラド、私はなんだか良くない気がするの。そんなに大きな飛行石は悪い事を呼び込みそう」

ぽろりとレーナの目から涙が零れた。

「私はラピュタが大好き。だから危険なことになって欲しくない。でも、もしかしたら、ラピュタは」

ラドがレーナを見る。キュイン、と音を立ててレンズが動いた。

「ラド、わたしには何も出来ないわ。だってわたしは王様の関係者じゃない。それにこれは私の予想だもの。」

事実になるか分からない。そうレーナは言った。
俯いて黙りこんだレーナの小さな頭を、ラドは大きな指で撫でた。その動作はゆっくりとし、慈しみを感じさせた。

「ラド?」

ラドの頭のライトが点滅する。ぴか、ぴかり。レーナはそれを理解したように、笑む。

「ありがとうラド」

暖かく穏やかな日だった。


後書き
短いお話かつ、個人的解釈で成り立っていてすみません…でも書いててとても楽しかったです。
ラピュタの世界はとても素敵で、それを上手く表現出来なくて悩みましたが、最後は勢いで書きました。
ラドのイメージはラピュタに出てきたあのロボットです。あのロボットさん大好きです。レーナの外見イメージは特にありません。中身は少しだけ未来を考えたりする普通の少女です。
最後になりましたが、読んでいただきありがとうございました!
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