見果てぬ夢
「飛行石の、かけら」
「欲しいかい?」
祭りが終わって一週間。仕事の休みが重なり、二人は静かな喫茶店で軽食を摂っていた。焼きたてのパンに挟まれた新鮮な野菜と、燻製のハム。彼はさらにオレンジジュースを、彼女はお茶を頼んでいた。
「……あれば、自由に飛べるわね。簡単な装置だけで」
「それなりに軽量化していれば自由に飛べるだろう。おそらく僕の親指の爪ぐらいの大きさがあれば……」
「出力機関はすぐに作れるものね……」
物憂げに彼女はグラスの表面を指でなぞる。結露した水滴は重力に負け、グラスを伝ってテーブルクロスへと染みこんでいった。
「……警備の情報」
「そもそも、飛行石のある場所」
「わからない、か」
「調べてみたことは無いのよね」
「調べてみるかい?」
気軽に彼は言った。彼も彼女も、下級市民に比べて情報を手に入れやすいのは確かだった。同時に、飛行石の場所や警備の情報は、彼らであっても開示されない情報だ。ましてや、目的が飛行石の一部を手に入れることであれば罪に問われるのは必至だ。
それでも。
「調べて、みるわ」
「なら僕も、調べよう」
それしか方法はない。それ以外の道がない。そう思ってしまった以上、止まれるはずもなかった。